S市某所のパン屋さん前、駐車場脇のドライガーデン。
午後になると駐車場に「本日完売」と張り紙の出る人気店で、我が家では1週間分を予約して焼いてもらっている。きっとそういう客ばかりなのだと思う。看板も小さく、ショウウィンドウもなければ、ドアから中も見えない。
知らない人にはパン屋さんと分からないのはもちろん、お店ということも分からないほどの店構え。グルメ情報誌やタウン誌への掲載も断っているという。なぜならば、一過性の客が増えていつもの客に迷惑がかかるから。
でも、ドライガーデンの写真だけならいいよね、とこっそり。
多肉にハマった後の初めての訪問で、店に入る前に気が付いた。そういえば週一の受け取りはいつも夫で、前の店から引っ越してからは初めてだった。ガーデンという作りこみではなくて、アガベコーナーと言ったほうが良いかも。とにかく、デン、デン、デン、、、と大きなアガベが西陽をいっぱいに浴びて凄い迫力。
その時はひとつも名前を知らず、今でもわかるのは吉祥天と笹の雪、吹上くらい。細長い葉のアガベは、うちのデュランジェンシスに似ているけれど、青のリュウゼツランかもしれない。
緑の薄い二つは、PictureThis で調べるとアロエ・ポリフィラとアロエ・フェロックスと出る。そうなの? PictureThis はよく外すので、もしかしたら違うかもしれない。いずれも北風と西陽に耐える強健な種類なのだろう。
中でも気に入ったのは吉祥天(パリー)。60センチほどの大きさで、ブルーグレーの葉の優美さと、鋭く黒いとげに見惚れてしまった。子株もたくさん出ている。店主によると、道路に出た子株が盗まれてしまったという。敷地外とは言え、それはいかん。
最近、多肉の鉢が盗まれたという話を聞く。私も去年、センペルビウムの花が咲いた鉢を盗まれた。無人販売でミニポットを並べていた脇に、こんなふうになりますよ、と置いていた。「非売品・サンプル」と札を挿して。
足元を見ると、その札が落ちていた。良く考えれば、風か何かで札が外れてしまい、売り物だと思って買っていった、のかもしれない。悪く考えれば、その札を外して捨て、持ち去ったのかも。
無人販売では、一定程度の持ち去りは織り込み済みとは思う。私も、100円玉がなくて申し訳ない90円で勘弁して、というケースや、三個欲しいけど250円しかない、というケースは受け入れられる。でも4号鉢の花付きは想定外だった。センペルは花をつけると枯死するので、そのことも書き添えてあった。だから花が終わったら死んでしまう鉢を持ち去る人がいるとは、思わなかったのだ。
花泥棒は泥棒ではない、と聞いたことがある。そう思って気軽な気持ちで持ち去ったのかもしれない。でもれっきとした窃盗です。盗まれた時の悲しい気持ちは、花だろうと自転車だろうと同じ。昔母が、植えたばかりのバラの苗を盗まれてすごく怒っていたことを思い出す。それで彼女は柵を付けた。私もそれ以来、盗られたくないサンプルの鉢や寄せ植えは、自転車用のワイヤーチェーンで金網にしばりつけている。
アルバムから話がそれてしまった。でも、こうして写真を貼っていると、いろいろなことが思い出され、連想も広がっていく。
それで吉祥天が欲しくなった。市内の園芸店にあったものは大株で、手の出る値段ではない。ネットショップのよくわからない写真ながら、パリートルンカータ、メリクロン株5号ポットを購入。届いてみたら爪が赤かった。パリーもバリエーションが多いらしい。
この子も地面に降ろしたらあんなに大きく立派になるかしら。で子株も出る? でもその勇気はまだ無い。
そうだ、思い出した。店主がもうひとつ気になることを言っていた。お店をリニューアルした最初のころ、「表の植物は何ですか?」とよく聞かれた。ところが最近は誰も聞かなくなったと。だからアガベブームはもう終わっている、というのだ。
ホームセンターで売られるようになってポピュラーになった=ブームの終わり、ではないだろうけれど、ブームはいつか終わるものだし、そのピークは越えたのかもしれない。