いつまで続く多肉ブーム–中国人バイヤーが去った後、多肉は庶民のものになったのか

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今もまだ多肉ブームは続いている、らしい。でも、ブームって必ず終わる時が来る。最近イングリッシュガーデンって誰も言わなくなった。多肉もいつか忘れられる時が来るのだろうか。

興味深いのは、多肉ブームは第〇次、というふうに繰り返し山があること。直前のブームは2015年から2018年の第4次。今は第5次なのか。もしくは、2018年から横ばいになっていたのが、コロナの巣ごもりでまた人気となり、そのまま今に至っている、ということかもしれない。

私は2017年ころの話は知らないので、あらためて新聞記事などを読むととっても新鮮。たとえば検索でヒットした日経2020年2月8日の記事。

多肉の輸入販売の業者によると、

10年前から多肉植物の個人向けオークションを年1回開いていたが、15年ごろから相場が上がり始めたという。「中国やタイで多肉植物のブームが起き、中国人バイヤーが持ち帰って増やして販売しようと、日本の珍しい品種を買い求めた」からだ。

17年の競売で動いた金額は総額6000万円、うち中国人の落札が半分を占めた。「17年の最高落札額は1鉢450万円。まさにバブルだった」と振り返る。

多肉植物の高額取引は「かつての洋ランブームに似ている」と、西さんは指摘する。1960年代から高価だった洋ランは、組織培養で増産する「メリクロン」の普及で価格が下落した。

多肉植物も「16~17年に中国のメリクロン専門会社が購入して大量生産に乗り出し価格が崩壊した」。逆に「18年以降は安価な中国産が海外に輸出されるようになり、中国人バイヤーが日本へ買いに来る必要がなくなった」という。

「多肉植物」バブル崩壊 次は「珍奇」ブーム?

中国人、多肉も買ってたのか!? 知らなかったなあ。5月の愛好会のセリで5万6万に驚いた私、40万のチタノータに平伏したけど、ほんとのバブルって桁が二つ違うんだね。そういえば碧魚連だっけ、房(枝)一本が1万円だったと聞いたことがある。このころの話なのか。

同記事からもう少し。

多肉植物はネットでの個人間取引が盛んだが、ネットでの取引数の増加も17年で頭打ちになった。

オークション比較サイトを運営するオークファン(東京・品川)によると、「ヤフオク!」や「モバオク」などを通じた17年のネット競売での多肉植物の取引総数は20万件。5年で3倍以上に膨らんだものの、18年、19年は横ばいが続いている。

成約単価も下がり始めた。16年は過去最高の195万2000円を付けたが、19年の最高値は53万2500円と大幅にダウン。5万円以上の取引数も17年の986件をピークに、19年は621件と2年で37%減った。

高額取引が影を潜めたのは中国人バイヤーが姿を消したことだが、価格低下は多肉植物が増やしやすいことも主因だ。葉をちぎって土に置くだけでも1年ほどで根付き、特別な設備がなくても室内で簡単に増やせる。個人で栽培する人も増えた。誰でも売買できるネット社会の広がりが低価格化を後押しした。

花き市場への多肉植物の出荷量は、17年をピークに減り始めている。

この記事はコロナが出始めたころのもの。2020年全体でみると、切り花の売り上げは減ったものの、サボテン・多肉植物は増えた、というレポートがある([PDF]第6業務状況 )。園芸店でも、花や野菜の苗が売れている、と聞いた。多肉は投機筋や富裕層のものから、庶民のものになったようだ。

そもそも、その辺の園芸店で数百円で買ったセンペルビウムが私の多肉Lifeの始まりで、加速度的に購入したのは近所の農家直売所とホームセンター。直売所では名無し苗3号ポットが128円だった。100均でも売られ、最低価格は近所のスーパーの花屋。88円を夫が見たという。

ただ、やはり陰りは感じる。ホームセンターに置かれている苗が、明らかに売れていない。店内に長く置かれ、徒長した苗がやけに目に付く。普及種がひとわたり普及してしまい、どんどん増えるし、もう同じような種類には魅力を感じない、というか。

私のように、ホームセンターから多肉Life入り、ネットで検索するようになり、YOUTUBEをチェックし、通販で買うようになる人がどれくらいの割合でいるのか。全員がここに至るわけではないだろう。

韓国苗はホームセンター値段の2倍から3倍、人気のものでは5倍10倍もめずらしくない。販売会は限られているし、ネット通販に縁のない人や、ホムセン値段以上は出せない人もけっこういそうだ。韓国苗レベルのエケベリアが、ホームセンターに庶民価格で出回る時が来るのかどうか。

ハマった人に対する売り方は、うまいよな、と思う。ちょっと頑張れば買える金額から高額苗まで、どんどん目新しい苗を提供する。YOUTUBE配信している人気業者の苗は、ネットにアップしたとたんあっという間に売れてしまう。すごい熱を感じるけれど、ちょっと異様な気もする。

先日の販売会で後ろに並んだ人は、新幹線使って3時間半かけて来た、と言っていた。地元にはこんなかわいい苗は売っていない。ネットでも買うけど、でもやっぱり目で見て選びたいから、と。

一定の根強いファンには入れ食い状態で売れる。多肉は増えるけれどダメになることも多いから、リベンジと称して買いなおすこともある。上記の彼女に、どんどん増えちゃいませんか? と聞いたら、その分枯らしてるから、と笑っていた。

イングリッシュガーデンブームはなぜ終わったのか。イギリス風の庭に似合う植物は日本の夏に弱い。毎年枯らして、それで翌年買い替えて作り変える情熱がそう続くとも思えない。多肉と違ってある程度広いスペースが必要だし、草取りも水やりもデイリー仕事だ。

一方多肉は、年一の植え替えと、週一の水やりと、気が向いた時の枯れ葉取りだけ。多肉も同じように日本の梅雨と夏に弱い。でも小さな鉢物は買い足すだけでいい。ベランダでは、多肉の負担を減らす遮光も簡単で、扇風機で風を送ることもできる。多肉は適応能力が高い。イイ感じに弱くて強い。

もうひとつ、多肉は年間を通して楽しめることも大きい。イングリッシュガーデンは冬は枯れて茶色一色になるけれど、多肉は秋から春までずっと紅葉が続く。一瞬の開花のためだけに他の季節の全てを捧げるというのは、情熱に加えてかなりの労力と忍耐が必要。でも、多肉は庭ほど手がかからず、かけた労力以上のリターンがある。

更に思うのは、多肉は物欲を刺激するということ。コレクションする楽しみがあるのだ。植物ではあるけれど、物に近い。寄せ植えはインテリアの素敵なオブジェになる。所有する喜びが他の鉢物に比べて断然大きい。どんどん新しくかけ合わせ、珍しく美しい苗を創出すれば、人間の欲望に限りはない。

だから多肉のブームは案外長く、繰り返し甦るのではないか。そして今は、ブームになってピークを迎え、陰っていく流れと、商売のうまい業者と一定数のコアなファンの熱い動きと、その両方が交差しているような気がする。

日経の予測「次のブームは珍奇植物」が的中しているように、けん引役も変わっていくのだろう。ホームセンターでもアガベを見かけるようになった。そういえば友人も、道の駅で500円のアガベを買ったという。

さて、葉挿しや銅切りで増える多肉をどうするか。皆がメルカリで売るようになれば、市場の価格は下がり、ブームの全体像も変わっていく。加えて置き場所問題。ベランダの多肉棚が一杯になったとき、その人のマイブームが終わるのかどうか。

以下のブログも興味深かった。Googleの検索ワードを基にした2021年7月時点での考察。

たにログ278 【考察】過去の多肉ブームと最近のトレンドについて!多肉植物は流行っているの?

※アイキャッチ画像は2022年4月20日のもの。寄せ植えのパールフォンニュルンベルグ、ブロンコなどのセンペルビウム、遠景の紅壇やクリスマスなど、まだ紅葉が美しい。

 

【追記】
スーパーの88円はその後私も確認した。アズールブルーや霜の朝など、しっかり名札もついていた。ホームセンターや園芸店で見かける生産者で、私も何種類か買ったことがある。

88円はさすがに園芸店の管理下のものとは違い、徒長したり、葉伸びしたB級苗。持っていない苗を2株買ってみた。傷んでいるので植え替えたが、つくかどうか。初めての人が値段につられてこの時期買って、植え替えて大丈夫なのか、ちょっと心配な苗たちだった。

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